ジノは驚いていた。

未だかつてない程に、驚いていた。
ナイトオブラウンズとなってから、滅多に動揺を見せることなどなかった、にも関わらず。
それを隠せないでいた。

ジノが驚いてみせるのは、パフォーマンスとしてのそれが主であった。
立場的にも、そうであるべきと認識していたし、それでなくとも、そもそも純粋にジノを驚かせることができるもの自体が少なかった。
そのジノが、言葉を失う程に驚いている。


それもそうだろう。
朝起きて一番に「グッモーニン!よく眠れたかいハニー」とばかりにスザクの部屋に飛び込んだら。
いつもならば凍えてしまいそうな程冷たい、とても冷たい視線が即行で送られてくるのに。
今日はいつまで経っても体感温度は標準のままで。
不思議に思って部屋を見渡すと。

そこに居たのは、思い描いていたスザクではなく。

彼をそのまま小さくしたような、愛らしい子供だったのだから。


なんでこんなところに子供が、とか。
ここはスザクの部屋だよな、とか。
思っても何も言葉にはならない。
ジノは部屋に突撃したそのままの体勢で固まってしまった。
相手も相手で、突然の闖入者に呆気に取られていて。
振り向いた状態のまま一時停止。



完全に止まったその場を動かしたのは、にゃーという鳴き声とともに姿を現したスザクの連れている愛猫アーサーだった。
かの猫を確認したことで、ジノは現実を認識した。
アーサーが居る、即ちここはスザクの部屋。
だとしたら、目の前に居るこの小さいスザクは?

「…私とスザクの子か!?」

いや待て彼に生殖能力はない。
生物学的に不可能だ。
それでもスザクなら出来そうな、そんな気もする。
ただ、気がする、というだけで身体の神秘を超えることはどうしてもできない。
残念ながらジノは経験から、気持ちがもたらす効果も限界があることを知っている。

じゃあ一体。








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