青い空、白い雲、穏やかに降り注ぐ太陽の光が、温かな夢の世界へと誘う。
周りを見渡すと、それに抗えなかった級友たちが伏せっているのが見えた。
窓際の一番後ろの席という誰にも羨ましがられる良席を自らの席としているスザクにも例に漏れず、そのお誘いは来ている。
級友からは勿体無いと思われながらも、その良席を活用したことはない。
が、普段は謹んでお断りしているその誘いが、今日に限って強引であるため、ある意味その席は適切な用途として使われそうになっている。

つまり、この上なく眠い。
あちこちから聞こえていたペンを走らせる音も、今はほとんど止んで微かに響いているだけで。
穏やかな沈黙が空間を支配している。
なんて平和なのだろうか。


現在、教室に教師の姿はない。
チャイムが鳴った当初は確かに居て、起立礼着席と挨拶もしていたのだが。
彼女は突然飛び込んできた教頭に連れ出されてしまったのだ。
余りの慌てように、何か事件かと、ナイトオブラウンズたるスザクが思わず腰を浮かしたが、ラウンズが出動するほどのものではなかったらしい。
要旨を聞いた担当教諭に押し留められ、スザクも皆と一緒に仲良く自習と相成っている。

ぽかぽか陽気の午後一番の自習は、夢の世界に旅立つにはもってこいのシチュエーションだ。
薄く開いた窓からはサラサラと木々の揺れる音と共に、ふわりとした風が入り込む。


昨夜も遅かった、というか学生と総督補佐の二重生活は、いくら体力に自信のあったスザクといえど、地味にキツイ。
元々身体を動かすことは得意でも頭を使うことは苦手としているスザクは、つまり事務作業には向いていない。
故にその分野を得意とするミス・ローマイヤが居るのだ。
スザクのフォローのために選出された訳ではないけれど、お陰で必要な会議以外に出席は求められていない。
それでも、デスクワークは山ほどある。立場上赴かなければならない場面も多い。
そして実はレベルの高いアッシュフォード学園の授業について行くのは、スザクの頭には少々荷が重く。
それぞれ単体であっても苦労するのに、それがタッグを組んでスザクへとやってくるのだ。
体力的にも精神的にもしんどい。
それでもスザクに授業中に居眠りするという技はない。選択肢にも成り得ない。
瞼が重くなってきていても、根性で抗う。
ラウンズたるもの、こんな誘惑に負けてたまるものか。
強引なそれにも毅然とした態度で立ち向かい。
手放しそうになる意識を何とか掴み寄せようと格闘している。
そんな必死の攻防を繰り広げていたスザクの耳に、こんな場所で聞くことなど有り得ない声が届く。

「ごきげんよう、皆様」

ここ一年で図らずも聞き覚えのできてしまった声にそっくりだ。
そっくりというより、寧ろ同じじゃないか。
それでもその声はここアッシュフォード学園、というかエリア11で聞けるものではない。







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