来たか。
自分たちを否定するために、嘗ての同僚たちが拳を振り上げたと聞き、スザクが思ったのはそれだけだった。
自分たちのしようとしていることなど、彼らが認められるはずがないし、認められようなどとは思ってもいない。
逆に、今後の布石のために好都合とすら考えていた。

ただ、視界の端に映る、見慣れたトリコロールの機体だけが、スザクの心に静かに影を落とす。
分かっていたはずだった。
けれど、実際に目の当たりにするのは、また違った。
それでもスザクの駆るランスロットは、順調に一機、また一機撃ち落としていく。
何も考えないように、ただひたすらに。
爆炎と共に散る、帝国最強といわれた騎士たち。

彼らの最期を視界に入れないよう、ランスロットを舞わせる。
スザクがラウンズの一員になったのは目的を果たすための踏み台であったからで、そしてナイトオブワンになるためには自分より上の席次の者たちを蹴落とさなければならなかった。
元々愛着も何もなかった同僚であったはずだから、今回手に掛けることだって全く気にも留めないでいられると思っていたのに。

それなのに。
けれど実際は、感情が動いてしまいそうで、直視することができずにいた。


「今ならまだ戻れる!」

そんなスザクの微妙な戸惑いにつけ込むかのように、開かれた回線からジノの声が聞こえてきた。
届いたジノの声は必死で、スザクは顔を歪める。
何を言っているんだと、そう思うのと同時に生まれた、嬉しいような申し訳ないような複雑な感情。
そんなもの彼に向けてはいけない。
ジノは綺麗だ。そして真っ直ぐだ。
だから、汚さないよう切り捨てる。






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