全く、嫌になる。
ジノは心中で吐き捨てる。
嬉々として話す両家の親たちに、頬をうっすら染めてジノを見てくるお見合い相手に、そして何よりここに居る自分自身に。
モニカに何か策があるようだから来たものの、そうでなければ任務にかこつけてボイコットしただろう。
それが個人的な感傷にすぎず、ジノにとってマイナスにしかならないと分かっていても、それでも。

周りの声がジノを通り抜ける。
聞こえていても認識していないから、それは聞いていないのと同義で。
モニカまだかな、とここに居ない同僚に思いを馳せていると。
今まで不透明だった音に、待ちに待った鮮明な声が混じった。

「こんにちは、お邪魔いたしますね」

発生源へと顔を向けると、別れたときのラウンズの制服そのままの姿のモニカが扉を開けて微笑んでいた。
堂々としたその姿、凛としたその表情にジノ以外の同室者が気圧されかけるが。
ジノの父親が声を投げ掛ける。

「これはクルシェフスキー卿、一体…」
「いえ、ヴァインベルグ卿がお見合いされると聞きまして、どうしてもという人がおりまして」
「何っ?」
「さ、こちらへ」

モニカが斜め後ろへと声を掛けると、影から現れたのは、目を伏せた女性だった。
特別美人という訳ではないが、どこか惹きつけられる女性。
注目を集めた彼女は、すっと視線を上げる。
ジノはあんぐり口を開けている。
それをそっと見遣ったモニカは、気付かれないようにニヤリと笑った。
しばしの間を経て、ハッと気付いたのはジノだった。






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