「アーニャ!」
名を呼ばれ、振り返ると。
マントをはためかせながら駆け寄ってくるスザクが居た。
そのすぐ後ろには微笑んでいるジノ。
「どうしたの」
「アーニャこれから作戦行動だろ?」
「そうだけど?」
「それまでに渡しておきたかったんだ」
はい、と目の前に差し出されたのは綺麗にラッピングされた四角い物体。
何よりも先に疑問が浮かんで、反応が遅れると。
今度はジノから花束が出てきた。
益々分からなくなって怪訝な顔つきになる。
するとスザクは困ったように眉尻を下げた。
「急にごめんね。今日はアーニャの誕生日だって聞いたから」
「誕生日…私の?」
「あれ?違った?」
「お前ら2人とも自分の誕生日に無頓着すぎ!私は盛大にアピールするのに」
「ジノ、君は少し抑えた方がちょうどいい」
スザクが祝ってくれるならなー、とスザクの肩に手を回したジノを、当人はスルーして私へと向き合う。
「お祝い、くれるの?」
「うん、受け取ってくれたら嬉しいな」
差し出されたままだったそれを受け取ると、スザクはほっとしたように息を吐く。
ごめん、そんな風にさせたかった訳じゃないの。
ただ今までこんなことなかったから。
戸惑ってしまっただけ。
「開けても?」
「勿論」
リボンの端を摘まんでそっと引っ張ると、しゅるっと簡単に解けてしまった。
開けるためとはいえ、その行為に少し寂しくなったけど、引き続きテープで留めてあったペーパーを外していく。
出てきたのは―――
「アルバム?」
「そう、アーニャはいつも写真をデータで保管してるけど、バックアップは色んな形でしておいた方が良いんじゃないかなと思って」
そこまで聞いて私は思わずスザクに抱き付いた。
慌てて私の名を呼ぶスザクの声が聞こえてきたけど、構わずぎゅーと力を入れる。
嬉しい。
私の記憶のことはまだ話してないけど、大事にしている記録のことを考えてくれて。
頭の上に優しい掌の感触を覚えて、更に嬉しくなる。
「2人だけでずるい!私も混ぜてくれー」
「っぅ、ジノ重い」
軽い振動を感じて顔を上げると、ジノがスザクごと私を包み込んでいた。
間に挟まれてしまったスザクには申し訳ないけど、私は満たされた気持でいっぱいだった。
「そしてこれも記録して一緒に飾ってくれ」
「コスモス?」
「歳の数だけ薔薇の花束にしようかと思ったんだけど、スザクが誕生花の方が良いって言うからさ」
「流石にそれは気障すぎるだろ…」
呆れたように言ったスザクと、ジノが目を合わせて。
「アーニャ、生まれてきてくれてありがとう」
声を揃えて告げられた。
プレゼントは2人だから2つな、とジノが笑う声が遠く聞こえる。
あぁ、花と一緒にこの気持も記録できたら良いのに。
2008/10/27