えええぇぇ!という声が部屋中に響いて、その場に居たアーサーが顔を上げた。




HAPPY BIRTHDAY to you you!





大声を上げた犯人であるジノが口を開くと同時に耳を塞いでいたスザクが、そこから手を放す。

「ジノ、うるさい」
「耳塞いでただろ?」
「それでもうるさい」

何だよー、とキャンキャン喚くジノを一瞥して。
スザクはごめんね、とばかりにアーサーへと手を伸ばす。

「うぅ…っ」

間髪入れずに、近づいてきた手を噛みついたアーサーへ眉尻を下げるスザク。
全く相手にされていないジノは、ぶすぅっと頬を膨らませてスザクへと近寄る。

「スザク!アーサー構ってないでこっち見ろよ」

両手で顔を包まれ、強制的にジノへと向かされる。
邪魔をするな、とばかりに睨みつけてくるスザクに構わず、ジノは問い詰める。
先程不覚にも動揺して大声を出してしまった、事の真偽を確かめるために。

「スザク、今日誕生日なのか!?」
「あぁ、そうだけど?」

それがどうした、と言いたげに顔をしかめたスザクに、ジノはさらに畳み掛ける。

「何でもっと早く言わなかった!」
「別に、取り立てて騒ぐようなことじゃないだろう?」
「騒ぐことだ!」

顔に手を添えられたまま、ぎゃーぎゃー騒ぐものだから、うざいことこの上ない。
眼前に広がるジノの整った顔を見据え、スザクは思う。

それにしても。
どうしたらこんなに些細なことで真剣になれるのだろうか。
スザクには不思議でならなかった。

自分の世界に入りかけていたスザクだったが、その間にもジノはずっと喋り続けていて。
いい加減黙らせようかと、腹を据えたとき、ジノがハッとしたように眼を見開いた。

「って、スザク1つ年を取ったってことは…」
「19歳になるね」
「じゅうきゅ…!」

…何その面白おかしい顔は。
言い掛けた言葉を言い切るよりも先に固まってしまったジノの顔を見て、スザクはそう評する。
アーニャじゃないけど、記録したいかも、と思ってしまった。
微動だにしないジノ。
ジノが固まってる隙に、とずっと顔にあったジノの手を外す。
と、復活したジノはまた騒ぎ出す。

「うっそだ!その顔で19歳なんて信じられない。世界を騙している。全方角へ謝れ!」
「それを言うならお前のガタイの良さの方が詐欺だ!」
「こんな時に褒めるなよ!」
「どこをどうしたらほめているように聞こえるんだ」

小学生からやり直して来い、と言えば。
俺学校通ったことないし、と返されて。
お坊ちゃまめ、と罵るスザクに、ジノは正面から抱きつく。

「あーもうスザクは可愛いなぁ」
「言ってる意味が分からない」
「一緒に小学校行くか!」
「行かない!」

言い合いがエスカレートしていくにつれて、更に2人の距離が縮んでいく。

「纏わりつくなこのデカブツ」
「照れるなよ」

言って、耳元に唇を寄せて囁く。
生まれてきてくれてありがとう、と。
その瞬間、スザクの顔に朱が走った。







2008/07/10
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