「ジノ…本当に行くのか?」
首を傾げて上目遣いで見上げながら、スザクがそう尋ねてきた。
心なしか目も潤んでいるような。
一体どうしたんだ、と戸惑いながらもジノはああ、と頷くと。
スザクはチッ、と舌打ちして、さっきまでの大層可愛らしい顔を引っ込めてしまった。
「…なんだその早変わり」
「別に」
「俺がアッシュフォード学園に行くのがそんなに不満なのか?」
「…別に」
そっぽを向いて、そう告げるスザクに、ジノはにやにやしたくなる。
それを抑えて口を挟まずにいると。
「…ジノが学校に行ったことなくて、行ってみたいと思ってたことは知っている、でも…」
「そんなに心配?」
「……」
「言ってよ、スザク」
スザクがここまで言い淀むことは滅多にない。
どこか嬉しくなって、ジノは続きを促す。
ねっ、と肩に手を置いて待つ。
すると、観念したようにスザクが口を開いて。
「そりゃ心配さ」
目線を外したまま、そう発したスザクにドキッとする間もなく。
「君がアッシュフォード学園に行くなんて絶対問題を起こすに決まっている!」
「え?」
「前にピザ作りをぶち壊したことを忘れたのか?」
「…それは悪かった」
「世間知らずな君のことだ、普通に学園生活なんて送れる気がしない」
一気に断言したスザクに、ぽかんとしたジノ。
それにしても、すごい言われようではないか。
そこまで言わなくても。
「スザクは行ってるのにー」
「僕は任務の一貫」
「じゃあ俺も」
「エリア11では僕が責任者だろう?」
言い切る前にずばっと遮られて、流石に落ち込みそうになる。
取り付く島もない。
最初の頼りなげなのも演技か騙された!
「ここは中華連邦だもーん」
「だもーん、って君…」
「スザクも一緒、だから大丈夫」
感情が排除された、けれども優しい声が、2人のやり取りを遮って。
振り向くと、中等部の制服を着たアーニャと、笑いを堪えたミレイが立っていた。
「まさか、アーニャも?」
「似合う?」
「うん、可愛いよアーニャ」
「スザク、俺は俺は?」
「君は全く似合わない」
「ひっでぇ!そんなはっきり」
最初から高等部の制服を着ていたジノにそう返すと、アーニャに向き合う。
「アーニャも転入するつもりなのかい?」
俺のときと態度が違う、と喚くジノを放置して、アーニャを促すと、彼女はこくんと頷いた。
困ったように、眉尻を下げたスザクに、ミレイが声をかける。
顔に笑みを称えたまま。
「まぁ、スザクくん、良いじゃないの」
「会長…」
「アッシュフォードは歓迎するわよ」
「ほーらスザク、彼女もこう言ってる」
「分かりました、何かあったらすぐ退学にしてやって下さい」
こいつを、と口を挟んできたジノを示す。
驚いたように名を呼び、スザクへと顔を向けた彼には、問題を起こさなければ良いだけだろ、と返して。
エリア11へ向かうために移動するミレイとアーニャに続いて、部屋を出て行こうとしたジノを引き止める。
スザクは真剣な顔で。
「どした?」
「ルルーシュには気をつけて」
「ルルーシュ?」
振り向きスザクの表情を見て、ジノはそれ以上尋ねるのを辞めた。
「分かったよ」
そう答えると、スザクは明らかにホッとした。
纏わせた張り詰めた雰囲気で微かな緩み。
「僕もすぐに行くから」
「あぁ」
部屋を出て、背後で扉が閉まる。
さぁ、どんな学園生活になるのか。
ジノは逸る気持ちになっているのを自覚した。
What's worrying you?
その言葉の真意は…?